77.トマソンビット
地面から生えてるこの物体。ビットとも呼ばれる岸壁の係船柱である。ここは北九州市の門司港。港近くのレトロな建築が人気のスポットだ。
このあたりは旧門司港1号岸壁にあたる。昭和6年(1931)完成。外国貿易岸壁として大型船も多数係留されたという。係船柱より右側は昭和59年(1984)より埋め立てが始まり、平成4年(1992)工事完成。現在は観光施設の海峡ドラマシップなどが営業している。
3年前に来たとき、なかなかおもしろいトマソンがあると思い撮った写真がこれ。そして再び来てみると――。
2004年1月 福岡県北九州市
まだいた笑。もしかしたら撤去されたかと思っていたのだが。
これは上の画像とは逆方向から撮ったもの。係船柱の続く先には車が停まっているが、これは門司港湾合同庁舎の駐車場。ということは当然――。
駐車場にもいる。役に立っていないのに存在感のあるのがトマソンだが、これは無害というよりもむしろ邪魔になっている。たまにはバンパーを凹ませる車がいるのではないか。
一番上の画像の左の方、壁画のある建物は西海岸1号上屋という。昭和4年(1929)完成のこの建物の前に「門司港西海岸物語」という案内板があり、それには「現在の門司港西海岸地区一帯は埋立により、その姿を変えてしまいましたが、1号上屋の前に長く続くビット(係船柱)や石畳がわずかに名残を留め、旧岸壁の位置を物語っています」とあった。
案内図にも「←旧ビット」の文字が見える(画像の中心より少し左側)。ということは、撤去が遅れてトマソンになっているというよりも、積極的に残されている歴史遺産であるということか。
同じ歴史遺産でも、B級のイメージがあるトマソンに対し、こちらは自治体公認のれっきとしたもの。車の方が遠慮するのは当然のことであろう。
正面と真後ろから見たビットくん。特に後頭部のあたりなど、哀愁の漂うたたずまいである。何か失敗をしでかした海の生物のようだ。
こちらは現役の係船柱。つながれているのは遊覧船ヴォイジャー。土星をイメージして造られた観光船だ。当初はスペースワールド行きの航路に導入されたため、このようなデザインが採用されたのだろう。が、近年は、この格好で巌流島の決闘見学にも出かけてるんだそうな。
2007年2月 福岡県北九州市