路上観察と琺瑯看板、マンホールのふた
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懸魚1


二条城

こちらは京都の二条城。後の建物は二の丸御殿の「遠侍」(とおざむらい)ですが、破風(はふ:三角形の部分)に下のような飾りが見えます。これを懸魚(げぎょ)といいます。なお、菊の御紋のついた山形の板は破風板といいますが、壁に風が当たると風が左右に分かれるので、もともとはこの板のことを破風と呼んでいました。この破風板から下がっている飾りが懸魚になります。

二条城懸魚

撮影:1986年12月 京都府京都市

懸魚はおもに神社仏閣に見られます。もとは魚の形をしていて、鯱(しゃち)と同様、火事を封じるおまじないと言われています。民家に見られる懸魚は明治以降のもののようです。
懸魚に関しては懸魚の由来と形態というサイトを参考にさせて頂きました。感謝申し上げます。

古い懸魚

東寺(教王護国寺)慶賀門の懸魚

京都市南区にある東寺(教王護国寺)慶賀門の懸魚。懸魚にしては細長く、先端の魚の尾ひれのような形とともに、魚のイメージを残す古いタイプの懸魚とのことです。

懸魚の種類はいくつかありますが、これは猪目(いのめ)懸魚。猪目とはハート形、あるいはハートを重ねたようなひょうたん形のくりぬきのこと。古い神社仏閣は猪目懸魚が多いそうです。なぜ猪目と呼ぶのかは不明です。別にイノシシが目をハートにしながら猛進してくるわけではないのですが。

撮影:2007年11月 京都府京都市

民家の懸魚

今西家住宅
今西家住宅の懸魚

橿原市今井町にある今西家住宅の懸魚。今西家は単なる町民ではなく警察や司法の権限も与えられた「惣年寄」という家でした。格式のある家であったので、重要文化財である立派な建物や懸魚も許されたということでしょう。

懸魚は、手前の木製のものがよく見られる蕪(かぶら)懸魚、漆喰塗込めの白い方は、犬の顔のようにも見えますが、めずらしい狩股(かりまた、雁股とも)懸魚という種類です。狩股とは先端がV字型に分かれた矢じりのことです。

撮影:2005年3月 奈良県橿原市今井町

民家の蕪懸魚

民家のシンプルな蕪懸魚。蕪懸魚は、「人」のような形を重ね彫りした縞模様が特徴で、かぶらの形に似ているので名付けられたとのことです。魚の尾ひれを重ねたようにも見えますね。

撮影:2006年9月 岡山県備前市

民家の蕪懸魚

これも蕪懸魚でしょう。懸魚の上部に見られる六角形の飾りは六葉(ろくよう)と言います。六枚の葉を模様にしたもので、建物の釘隠によく用いられています。この六葉にも種類があるようです。

撮影:2002年11月 兵庫県姫路市夢前町

民家の蕪懸魚

こちらも蕪懸魚ですが、ひれ(懸魚の左右の部分)の方が目立っています。遠目には雲ではなく白バラに見えました。もう何年もツバメが来ているようですね。

撮影:2002年9月 兵庫県佐用町(旧上月町)

民家の蕪懸魚

玄関の上の蕪懸魚。小さなものですが、職人さんのセンスを感じます。

撮影:2003年2月 岡山県英田郡作東町

ナカコ将油の懸魚
ナカコ将油の懸魚

こちらは奈良県五條市のナカコ醤油。中央は熨斗(のし)の形に見えます。ひれの部分は唐草でしょうか。鬼瓦は、一般の民家には珍しい鬼面のものを使用しています。鬼瓦の下の飾り瓦は鶴と松ですね。

撮影:2005年3月 奈良県五條市

民家の懸魚

物見櫓にも登場した山本家住宅の懸魚。パルメット文様に見えます。パルメットは、古代メソポタミアで聖なる木とされたナツメヤシをモチーフにしたもの。緑の葉を絶やさないナツメヤシを、古代の人々は繁栄の象徴と考えました。パルメットはのちに唐草文様となり、仏教装飾にも用いられるようになっていきます。しかしなぜここに?

撮影:2007年11月 兵庫県姫路市

(2007年11月17日作成)