上下水道 京都府京都市2
上水道2
京都市 防火栓
殿堂
撮影:2007年5月 京都府京都市
『京都おもしろウォッチング』P75に、「大正三年発行『京都水道志』に図が載っていた」とある防火栓の蓋。昭和61年(1986年)2月に赤瀬川さんが発見された東山区では、既に新しい蓋がはまっていましたが、意外な場所でようやく発見。まだまだ現役でがんばっています。
京都市 消火栓
撮影:2005年5月 京都府京都市
これよりも文字の大きい消火栓の蓋が市内の至る所にあります。文字の小さい方が古そう。
消防は戦前は警察の管轄でしたが、昭和23年(1948年)3月警察から分離され、各自治体の組織に入りました(消防組織のない自治体もわずかにあります)。
消火栓は消防関連なので、蓋に入っているマークは自治体のき章が多いようですが、京都市の場合は、戦前の防火栓と同じように、水道局(現在の上下水道局)独自のマークが使われています。
京都市 京都消防 防火水槽
撮影:2005年9月 京都府京都市
線のずれと書体の違いが気になる防火水槽の蓋。新しいものはそのあたりは修正済。文字は右横書きです。おそらく昭和23年(1948年)から30年(1955年)ごろの蓋でしょう。水道局のマークではなく、当時の京都市のき章が使われています。
下水道
下水 大正五年
殿堂
撮影:2007年5月 京都府京都市
「大正五年」の文字入り下水蓋。石縁共々保存状態の良さに驚かされます。大正五年ということは1916年ですが、90年以上経っているようにはとても見えないですね。京都の市章は入っていませんが、このページに掲載。
『京都おもしろウォッチング』には、穴と突起の少ない「大正二年」蓋、この蓋と同デザインの「大正六年」蓋、同デザインで中央に市章のようなマークの入った「大正九年」蓋が紹介されています。
京都市下水道は、市上下水道局サイトによると、昭和5年(1930年)起工、翌6年(1931年)竣工となっています。『京都おもしろウォッチング』P75には、
『京都市政史』という資料から、どうやら明治三十五年に電気軌道を敷設する際に、ついでにちょこっと下水を作ったというような事があり、その関係のものかもしれないという事が解ってきた。
とあります。が、これは昭和61年(1986年)のことで、すでに25年ほど経過しているわけですが、京都市公式には大正時代の下水道に関する記述はないようです。個人的にもなかなか調査できず、詳細不明で画像アップのみなのが残念です。
京都市 下水 大正十二年四月
殿堂
撮影:2005年9月 京都府京都市
『マンホールのふた<日本篇>』で「名古屋市型」と命名されているデザインの蓋。同資料によると、京都市の蓋は、鉄蓋受註メーカーが名古屋と同じ仕様書を使って製造したそうです。名古屋市の創設下水道は大正12年(1923年)3月竣工ということで、この蓋から名古屋市型デザインが採用されているのも納得できる話です。
中央は京都市情報館によると、昭和34年(1959年)まで京都市のき章、同35年より略章となったマークです。堂々と市のき章を出しているということは、大正時代から市が下水道を設置していたと考えるのが自然ではないかと思うのですが……。
京都市(下水)
撮影:2005年9月 京都府京都市
分流化が完了していれば汚水蓋かもしれません。
下の御所車蓋とともに京都市下水蓋の最新版でしょう。穴と穴の間の仕切り線が進化。名古屋市などの蓋で、仕切り線が中心に向かってすぼまっているのがありますが、この蓋の線はよりくさび形に近いです。他地域の蓋も最新のものはこのようになっているようですが、京都だと、蓋全体が御所車のようになるのでちょうどいいですね。
「源氏車」紋(『紋章とデザイン』P62の図を反転)。同資料P140に、「源氏車は……正しくは車輪紋または御所車紋というべき」とあり、御所車が源氏物語に何度も登場するので源氏車と呼ばれるようになったとか。
京都市(下水)
撮影:2005年9月 京都府京都市
京都市の紋章は、中央の略章に御所車紋を合わせたものですが(京都市情報館参考)、その御所車紋をパターン化したデザイン蓋。
蓋全体を紋章のようなデザインにするのもアリかと思いますが、それだと滑りやすいとか、模様が大きすぎて京都の路地の風景に合わなかったりするんでしょうか。
今後もイラスト仕様などにはせず、京都らしい渋い蓋を使い続けてほしいと思います。おそらく、いくら有名でも、舞子はんや神社仏閣デザインは採用しないでしょう。女性の顔や祭神・御本尊の下に汚水を流し車で踏むなどということは無いはず。京都はあくまでも京都であるのですから。
と思っていたら、京都市の新たなデザインマンホールを設置します!とのこと。京都はん!
京都市(下水)
撮影:2005年9月 京都府京都市
マンホールならぬランプホール(灯孔)と思われる小蓋。直径220(枠まで255)。デザインはJIS型に近いですね。蓋の大きさに比して石縁が立派で、直径はおよそ570。石縁まで入れると普通の下水蓋くらいの大きさがあります。
ランプホールは、下水道の点検の際、ランプを差し込んで作業をやりやすくするための孔。路上の小蓋は、開けるとバルブがある場合が多いですが、ランプホールは下水管まで通じている孔があります。開いたところを見たいのですが、長い間開けられていないようでした。
参考文献
- 『兵庫県管工史』昭和48年3月30日 兵庫県管工事業協同組合連合会
- 『京都おもしろウォッチング』1988年9月25日 赤瀬川原平・藤森照信他 路上観察学会編 (株)新潮社
- 『マンホールのふた<日本篇>』林丈二著 1984年3月30日 (株)サイエンティスト社
- 『紋章とデザイン』1996年3月6日 (株)淡交社